りぼんの読書ノート

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十二国記 ③東の海神 西の滄海(小野不由美)

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シリーズ第3部はさらに年代を大きく遡ります。第1部では陽子を、第2部では泰麒を助けた400年も続く大国・雁朝の立国物語。延王・尚隆も、延麒・六太も、戦国時代の日本で生を受けた「胎果」です。尚隆は戦乱の中で滅んだ小国の領主の息子であり、六太は口減らしで捨てられた貧農の息子。

「国がほしいか。ならば、一国をお前にやる」と延麒・六太によって雁国の王に選ばれた尚隆は、かつての暴君によって廃墟となった雁国をゼロから作り始めます。それも常識を外れた破天荒なやり方で。暴言を吐く実直の士を重用したのはともかく、ほとんど政務を放り出して官僚にまかせ切り。まぁ、国などというものは、王が親政を行わなくても官僚が回していけるもので、実は良い官僚を選ぶところが一番難しいのですが。

このやり方で20年がたち、ようちやく再興の兆しが見え始めたところで反乱が起こります。でたらめな政治を正すという大義名分のもと、妖魔に育てられた少年・更夜を使って六太を捕えて上帝の座を望む反乱者に対して、尚隆が仕掛ける見事な戦略が本書の読ませどころ。小野さん、こういうのも書けるんだ・・。その中で尚隆の思う「王道」が見えてくるのです。

本書の第3の主人公ともいえる少年・更夜は、六太の相似形ですね。どちらも貧しさの中で親に捨てられながら、ひとりは女仙に育てられて王に仕える麒麟となり、ひとりは妖魔に育てられて反乱者に仕える・・。六太と友情を交わしながら国にとどまれず放浪の旅に出た更夜は、後に意外な姿で再登場してくるとのことです。

2012/12