りぼんの読書ノート

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タフの方舟 2.天の果実(ジョージ・R・R・マーティン)

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さて、第1巻の禍つ星に続いて、第2巻の始まりです。

「 タフ再臨」 方舟修理代の借金を返済するためにス=ウスラムを再訪したタフが驚いたのは、前回の騒動が美化されたタフとトリーの恋愛アクションドラマとなって人気を博していることでした。大衆を味方につけて失脚を免れるためにトリー自身が書いたというのですが、そんなことより人口爆発問題が悪化している星は、再度方舟を狙うのです。テクノロジーによる食糧増産だけでは解決できないことはもうわかっているはずなのですが・・。

「魔獣売ります」 闘獣に富も名誉もかける十二カ国が治めるライオニカ星を相手にしたタフが、次々と魔獣を売りつけていきます。確かにこれはあくどい手口ですね。そもそも生態系の破壊は気にしなくても良いのでしょうか。もっとも人類入植の時点でオリジナルの生態系なんてめちゃめちゃなんでしょうが。

「我が名はモーセ 確かに旧約聖書モーセがエジプトに仕掛けたことは環境戦争かもしれませんね。タフの名を使いモーセの行為を再現して星を乗っ取った男に対して、タフが仕掛けた本当の環境戦争とは・・。超絶テクノロジーの持主は神に近い存在なのでしょうか。

「天の果実」 「ス=ウスラム3部作」の最終話なのでしょう。全体のラストを飾るにもふさわしい作品です。対症療法では人口爆発を抑えられない星に対してタフが提示した最終的な解決策は、もはや神の領域に踏み込んだものでした。周辺惑星と戦争寸前の危機に陥った星の総督につかざるをえなくなったトリーとタフの緊張感溢れる対話は、今までのユーモア感覚が消し飛ぶほどシリアスなものなのです。

ところで表紙の女性は、トリーなのでしょうか。宇宙港のマスターとして荒くれ男たちを従えてきた「鋼鉄のウィドウ」、しかもかなりの年配の女性としては、普通のSFヒロインのように色っぽ過ぎます。あ、そうか。トリーが脚本を書いたドラマの中での「トリー」なのかも・・。

2012/12