りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

星の光、いまは遠く (ジョージ・R・R・マーティン)

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タフの方舟の著者による第1長編です。

あまりに遠大な公転軌道を有するため銀河を彷徨っているかに見える辺境惑星ワーローンにダーク・トラリアンが降り立ったのは、かつての恋人グウェンに呼ばれたためでした。再会を喜ぶダークにグウェンが告げたのは、自分はもう結婚しているという事実。

しかも結婚した相手は、女性を所有物とみなすカヴァラーン星の住民であり、2人の夫に共有される自分にもはや自由はないというのです。グウェンを不遇な境遇から救出しようとするダークでしたが、グウェンの夫たちよりも保守的な別のカヴァラーン人から追われる身となり、事態は思わぬ方向へと進んでいきます。

その中で明らかになるのは、不遇な惑星カヴァラーンが独自の文化を築き上げた理由であり、グウェンの夫こそは改革を目指す者であるという真相。さらに、グウェンはダークを呼び寄せてはいないというのですが・・。オープン・エンディングなんかにせず、最後まできっちり片をつけて欲しかったなぁ。

はじめは野蛮な暴虐者としか思えないグウェンの夫が、徐々に英雄的な人物と思えてくる逆転の過程は、不思議な感覚です。異文化との遭遇とは、こういうものなのかしら。異文化を理解することによって自分の信念まで揺らいでくるのですから。

本書の背景に「失われた文明」があるというのは、『タフの方舟』とも共通していますね。どちらもひとつの壮大な銀河史における異なったエピソードなのでしょう。

2013/1