りぼんの読書ノート

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獣の奏者3.探究編(上橋菜穂子)

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このシリーズは、第1巻:闘蛇編第2巻:王獣編で綺麗に終わっていたはずでした。なぜ、「降臨の野」で起きた奇跡から11年後の物語が必要とされたのか。本書を読むということは、そのテーマを理解していくことなのでしょう。

「堅き楯」の一員であったイアルと結ばれて長男ジェシを授かり、王獣の教導師として過ごしていたエリンは、大公シュナンから突然呼び出されます。ある闘蛇村で突然起きた「牙」の大量死の真相を突き止めて欲しいというのです。人工的に飼育した闘蛇の生態の歪みに気づいたエリンでしたが、闘蛇軍を入手しようとしている隣国ラーザの陰謀に巻き込まれてしまいます。

さらに、亡き母の後を継いで真王となりながら、自分のありかたに悩み続けているセィミヤからも、王獣軍の編成を依頼されたエリンは、他の道がないことに気づいて愕然とします。それでも、王獣が戦争に利用された時は自分が全責任を贖う覚悟を決め、過去に起こった悲劇の真相を伝えているという「残された民」を探し出そうとするのですが・・。

やはり、謎は残されていましたね。そもそも「闘蛇の大量死」は、エリンの母ソヨンが死罪に問われた因縁の事件であり、この調査は二重の意味で過去へ遡っていくことを意味しているのです。闘蛇も王獣も、いわば大量破壊兵器なのですが、「生態系」である分、複雑さを増しています。

第3巻で覚悟を固めたエリンが、悲壮感を漂わせているのが気になります。著者は、彼女たちにどのような結末を準備しているのでしょう。物語は、最終巻完結編へと続いていきます。

2015/7