不思議な作品です。野良犬として生まれたトビーが何度も生まれ変わって別の犬生をおくるのですが、最後になって、トビーが転生を繰り返す深い理由がわかるという物語なんですね。ワンコ好きにはたまらない作品かも。^^
野良犬のトビーは犬好きの女性セニューラにつかまえられて大勢の犬たちとともに飼われますが、母親は逃げ出してしまいます。しかもこの女性は飼育環境が適切ではないと通報されて保健所に乗り出され、その直前にボス犬と喧嘩してビッコをひいていたトビーは貰い手の見込みがないからとガス室へ・・。
しかしトビーはゴールデン・レトリーバーの子犬として生まれ変わります。今度は犬好きの一家でベイリーと名づけられ、その家の少年イーサンから愛されて育ちます。人間の習慣がわからないベイリーはとんでもない失敗もしでかしますが、彼らの信頼と愛情は最後まで変わることはありませんでした。最後は大学生になったイーサンの腕の中で安らかに生涯を終えたベイリーには、思い残すことなどなかったはずだったのですが・・。
次の生まれ変わりはなんとメスのジャーマン・シェパードでした。エリーと名づけられて警察犬としての訓練を受け、恋人を失った訓練士ジェイコブや、自分に自信の持てない訓練士マヤとコンビを組んで活躍をするのです。溺れた少年を救助したエリーは、人間に愛されるだけでなく人間の役に立ったことに誇りを感じて、今度こそ犬生を全うしたと思いながら生涯を終えるのです。
しかし、それが最後ではありませんでした。ラブラドール・レトリーバーの子犬として生まれ変わり、バディと名づけられった元トビーには、今までに学んだ全てを使って果たすべき使命があったんですね。魂の目的とも言うべきその使命とは・・。
少々人間に都合のいい設定ですが、最初から最後まで犬の視点で書かれた本書は、ワンコたちへの深い愛情に満ちています。モコモコの子犬たちがママのミルクを争ったり、愛する飼い主の信頼に応えるために懸命に人間の指示を理解しようとしたり、飼い主の気分を感じ取ってなぐさめようとしたり、やっぱりワンコ好きにはたまらない作品です。この作者はかなりのワンコ好きなんですね。
2012/10