りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

マグマ(真山仁)

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ハゲタカ外資系ファンドの視点から、日本という仕組みの危うさを描いた著者が、エネルギー問題に挑んだ作品です。

地熱発電会社の再建を任された外資系ファンドの野上妙子は、政治家の息子の経営者や地熱発電に命をかける老研究者と出会って、地熱エネルギーの利用に未来を感じます。しかし、それを政争に利用する政治家や欧米からの圧力などさまざまな思惑が交錯する中で、行く手に暗雲が立ち込めてくるのです。

火山大国の日本で地熱発電が進まない理由は、大半の候補地が国立公園内にあるからと聞かされてきましたが、やはりそれだけではなかったんですね。地熱層の試掘費用が流用されて政治家の資金源になっていたという指摘は、事実ならば怖しいことですし、結局は原発との競争に敗れたということなのでしょう。

2005年に書かれた本書では、地震津波も起こらず、原発危機も起きていませんが、6年前の段階で既に原発の安全性とコストに疑問を投げかけ、最大の自然エネルギーの可能性を予感させる本書は、まさに今、おすすめの作品です。

ただ『ハゲタカ』でもそうだったのですが、メロドラマ的なラストは惜しい! もっとも、そこを期待して読む本ではありませんね。

2012/5