りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

野蛮なやつら(ドン・ウィンズロウ)

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名作犬の力の続編のようなプロットですが、雰囲気は全く異なっています。

 

カリフォルニアのラグーナ・ビーチで幼馴染みとして育った2人の青年、学級肌で平和主義者のベンと特殊部隊で訓練を受けた武闘派のチョンは、やはり幼馴染みのオフィーリアと友好的な三角関係を愉しみながら、極上マリファナの栽培と売買で成功を収めていました。

 

しかし、メキシコのバハ麻薬カルテルに眼をつけられて優雅な生活は一変。傘下入りを断った2人に対して組織はオフィーリアを拉致。彼女を取り戻すために2人は、組織を相手に危険な賭けに出るのですが・・。

 

メキシコの麻薬カルテルの内情には、例によって凄まじいものがあります。カルテルの元締めの死後、壮絶な内部抗争とアメリカの捜査当局の執念によって後継者と見られた兄弟が死亡、逮捕・・・までは『犬の力』と重なります。その後カルテルで権力を握ったのは、柔弱な息子を守りたい一心でボスとなった兄弟の妹エレナでした。しかし女帝だからといってカルテルを支配する流儀が変わるはずもありません。青年たちとカルテルとの抗争は次第にエスカレートしていき、ついに・・。

 

本書を支配する思想は、武闘派チョンの言葉に現れています。世界は「野蛮な世界」と「野蛮に近い世界」からなっていて、後者で発揮される力がより洗練されているにすぎず、2つの世界は同じ1つの世界なのだと。シナリオのような文章も用いながら書かれた本書は、オリバー・ストーンによって映画化され、続編の話もあるとのこと。この人の作品に駄作はありませんね。

 

2012/5