オリバー・ストーン監督によって映画化された『野蛮なやつら』の続編というより、前日譚にあたる作品です。メキシコのバハ・カルテルと壮絶な闘争を繰り広げることになる、ベン、チョン、オフィーリアの幼馴染3人組のマリファナ・ビジネスはどのようにしは始まったのか。その背景には40年に渡る歴史がありました。
もともとカリフォルニアと麻薬の関係は、1960年代のヒッピー文化のサブカルチャーであったマリファナに始まるそうです。本書でマリファナを事業化して密売組織「連合」と立ち上げるのが、ドク(オフィーリアの父?)とジョン(チョンの父)。これが第一世代。
第二世代はLSD。『野蛮なやつら』では精神分析医夫婦となっていた、ヒッピー崩れのスタンとダイアンらが中心人物。そして第三世代となるコカインが入ってきて、カリフォルニアとメキシコの相互依存関係が強まり、「連合」は国際麻薬抗争の一翼を担うまでに成長しています。
幼馴染3人組は商売を開始するに際して、父親世代が作り上げた「連合」と争う必要があったのです。もちろん「連合」がネットワークを築いているメキシコ・カルテルや、イタリアン・マフィアや、悪徳警官とも。軍人として世界の醜さを熟知するチョンはもとより、ジョン・レノン的な平和主義者のベンも、抗争に巻き込まれてしまいます。
本書に描かれた期間は、『犬の力』と同じ時代。さらには著者の他の作品に登場する『ボビーZ』や『フランキー・マシーン』も客演。シナリオのようなシンプルな文体で、世界を支配する原理は「ストレートな野蛮」と「洗練された野蛮」にすぎないとする著者の主張には、揺らぎもためらいもありません。
2014/6