りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

クロス・ファイヤー(柴田よしき)

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日本のプロ野球界に女性が進出して数年たった時期という設定の物語ですから、近未来SFでしょうか?

女性のプロ野球選手といっても、実力はぎりぎり通用するかどうかのレベル。まだ客寄せパンダ扱いであり、東京レオパーズに所属する楠田栞も早蕨麻由もほとんど敗戦処理の中継ぎピッチャーでしかありません。そんな中でキャリアも性格も対照的な2人の女性ピッチャーが、プレイに恋に奮闘する物語です。野球版ワーキングガール・ウォーズですね。

同じ女性ピッチャーでも、アイドル並の容姿と女性最速の141kmの球を投げる実力を持ち、小さい頃からずっとスター選手として扱われてきた麻由と較べて、ソフトボール出身の栞は地味な存在にすぎません。

しかし、臨時コーチとして雇われた大リーグ帰りの雲野の見方は違いました。恵まれた体力を持つ栞は、「女性初の先発完投型投手」になれるというのです。そして可愛い顔に似合わず負けず嫌いで根性がある麻由は、それを知って「女性初のクローザー」を目指すというのですが・・。

「女の子」が元気な時代ですが、野球やサッカーなどのプロスポーツの世界で男性に互して競い合うというのは、まだまだ夢物語にすぎません。しかし女性の進出にこそスポーツの未来があるという、著者の認識は正しいように思えます。さもないと中高年男性ファンが多いプロ野球などはいち早く衰退してしまうように思えますので・・。

「クロス・ファイアー」とは、ホームベース上を横切るように通過する速球のことで、左腕アンダースローの栞の決め球のこと。これが「ライジング」するようになったら、無敵の魔球になるかも・・です。

2012/5