りぼんの読書ノート

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鮫島の貌(大沢在昌)

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いずれも長編で第10作まで出ている『新宿鮫シリーズ』の短編集です。新宿署刑事の鮫島というキャラが短編に馴染むのかどうか、いささか不安もありましたが、どの作品もしっかりと「新宿鮫」のエピソードになっているのはさすがです。コミックの「こち亀」や「エンジェル・ハート」とのコラボ作品という異色作があるのは、「おまけ」ですね。

「区立花園公園」新宿署に異動直後から浮き上がる鮫島を、さりげなく桃井課長が守ります。
「夜風」暴力団と癒着した刑事の罠に嵌った男に、鮫島は「刑事を撃て」と言うのですが・・。
「似た者どうし」新宿でデート中の鮫島と青木晶が見たのは、かつあげされる少年を救った冴場獠と槇村香でした。「エンジェル・ハート」とのコラボ作品です。

「亡霊」殺したはずの男の姿に狼狽したのは殺害犯。男の正体は行方不明の弟を探す双子の兄。
「雷鳴」関西で鉄砲玉に使われて消される運命の男を救った鮫島が、殺し屋の足も洗わせます。
「幼な馴染み」鑑識の藪に誘われて浅草に出かけた鮫島が出会ったのは、型破りの警官でした。藪の同級生だったというその男の名前は両津勘吉。なんと「こち亀」とのコラボ作品です。

「再会」同級会に現れた成功者は、冴えない同級生たちや鮫島を見下すのですが・・。
水仙自然な形で鮫島に近づいた中国美女は、中国国家安全部の工作員だったのです。
「五十階で待つ」ネットで広まったドラゴン神話に騙されて犯罪の使い走りをする男の悲哀。

「霊園の男」第9作狼花の後日談。自らの手で射殺した間野総治の墓参りに行った鮫島が、間野の息子という男と出会います。外国犯罪者組織を集めて作ったビジネスも愛した女も失った間野の最後は、鮫島の手を借りた自殺だったのでしょうか。そして最後の言葉「あ」の意味は・・。

一番古いのが2005年1月の「雷鳴」で、それまでに本編は第8作まで出版されています。このような外伝的な短編が、もっと前からあっても良かったかもしれません。

2012/5