りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

新宿鮫Ⅹ・絆回廊(大沢在昌)

イメージ 1

前作狼花で警察内外の好敵手との決着をつけた後のシリーズ10作めでは、主人公の鮫島を理解して擁護してきた上司の桃井や、恋人のショウとの関係に大きな転機が訪れることになります。

22年の長期に渡って服役していた伝説のアウトローが、恨みを抱いていた警察官を殺すとの情念を抱いて出所。昔の関係者から拳銃の入手を試みます。その情報を得た鮫島は、犯罪を未然に阻止しようと捜査を開始するのですが、事件の全体像を理解できないうちに犠牲者が続出し、さらには鮫島までもが狙われてしまう。

アウトローの出所を待ちわびた女、かつての報恩の機会を求めた暴力団幹部、中国に戻って成長したアウトローの息子、そしてアウトローが恨みを抱く警官。彼らの「絆」が交錯する中に入り込んだ鮫島が見出した真実とは?

本書に登場する「金石(ジンシ)」という組織は実在するのでしょうか。中国とのルートを通じて犯罪を行っている、帰国した中国残留孤児2世の組織というのですが、普段は普通の日本人として暮らしており、正体がばれることを畏れるあまりにかえって無謀な行動をとるというのですが・・。ソ連崩壊前後に、アフガニスタン帰りの軍人による犯罪組織が勢力を伸ばしたと聞きますが、それと似た結びつきのように思えます。

シリーズ開始時には30代半ばだった鮫島も、もう40代半ばになるんですね。一匹狼として行動する鮫島の魅力は変わりませんが、周囲の人間関係は大きく変化してしまいました。彼が託されたという「公安部内の暗闘に関する重大な秘密」も謎のままですし、シリーズはまだ続いていくようです。

2011/9