りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ミサキラヂオ(瀬川深)

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地方都市を舞台に住民たちの関係を描いていく「地域ミニマリズム」的な作品には阿部和重シンセミア奥田英朗無理などがありますが、どの作品もつまらないのが特徴です(笑)。面白かったのは東方仗助らとキラー・クイーンの壮絶な闘いをクライマックスとする『JOJOの奇妙な冒険 Part4』くらい。^^

半島の突端に突き出た「ミサキ」を舞台にしてローカルFM局「ミサキラヂオ」の存在を狂言回し的に用いた本書も、案の定、面白くはありませんでした。

水産物加工会社の社長が、地元でふらふらしていた漁師の息子や東京のスタジオで働いた経験をもつ男をDJや録音技師として雇い、土産物屋店主の自作小説朗読や、高校音楽教師のクラシック選曲、農業青年の自作詩朗読、実業家の自作演歌などを中心に放送する「ミサキラヂオ」は、なぜか電波が届く時間が場所によって異なる不思議な放送局。

さらにヘビーリスナーの高校生、引きこもりの天才編曲家、診療所のドクトル、女子高校生たち、皆が集う喫茶店主などが関わり、「ミサキ」の四季が淡々とめぐっていきます。ラスト近くになって投稿葉書の常連だった青年の自殺と、土産物屋店主の小説の文学賞受賞という大きな出来事も起こるのですが、これらの事件も結局は日常生活の中に埋もれていってしまう印象。

まずは、ひとりひとりが自分のささやかな物語を互いに発信しあうこと。やがてそれが人々を繋ぎ合わせて、ついには絆となること。その過程で物語が生まれ出ること。著者の思いはそのあたりにあるのでしょうか。

だからブログやフェイスブックツイッターよりも、「場」のイメージが強い「ラヂオ」なのでしょうね。でも「ひとりひとりのささやかな物語」というものは、概して面白くないんです。^^;

2012/1