りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

流れ行く者(上橋菜穂子)

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守り人シリーズの番外編となる短編集は、女傭兵バルサと呪術師タンダの子ども時代のエピソードからなっています。

「浮き籾」
一族の厄介者だったタンダの叔父が化けて出たという噂が村に広がります。実のない籾のような生涯をおくったものの、気のいい男だった叔父が村人たちに怨恨を抱くなど信じられないタンダを連れて、バルサは確かめに出るのですが・・。同い年の幼馴染みながら、明らかにバルサのほうがお姉さんですね。

「ラフラ<賭事師>」
酒場に雇われているプロの賭事師の老婆ラフラに勘のよさを認められたバルサが、ラフラと領主が50年来続けてきた勝負の決着を見届けます。自らの死期を悟り、長年の友だったラフラに餞別金を送る機会を設けた領主に対し、ラフラが採った戦術に、バルサはプロの凄さを感じるのです。

「流れ行く者」
ジグロに連れられて隊商の護衛に同行したバルサが、初めて人を切る経験をして傭兵暮らしの厳しさと仲間を信頼することの難しさを学びます。信頼関係とは、信頼できる相手とできない相手を見分けるところから始まるんですね。

「寒のふるまい」
過酷な旅から村に帰ってきたバルサをタンダが迎えるという短い作品ですが、幼い頃から苛酷な逃亡生活をおくったバルサが、優しさを失わなかったのは、タンダが待っていてくれたから。

本書の影の主役は、バルサの養い親として彼女を守り育て、人格形成に多大な影響を与えたジグロだったように思います。

2012/1