りぼんの読書ノート

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真壁家の相続(朱野帰子)

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祖父の死を境にして、崩壊寸前になった真壁一族の物語が、大学生の孫娘りんの視点から描かれていきます。遺産だって家一軒しかないのに、ひとりひとりは悪い人ではないのに、なぜ遺産相続問題が起きるのでしょう。海に降るのドラマ化によってブレイクした作家の最新作品です。

キーワードは「公平感」なのでしょう。しかし、その感覚が人それぞれ異なることに、問題があるようです。真壁家の場合は、独身を通したマイペースの長女、自由人の次女、しっかり者の長男、失踪した次男の4人兄弟。祖父の家に住んで最後まで介護したのは、次男の嫁でりんの母の容子だったことも、問題を複雑にしています。相続権があるのは失踪した次男本人なのですから。

そして、次女に「常識的なアドバイス」をする内縁の夫や、ゴシップ好きな長男の嫁という、「相続権を持たない関係者」の存在が、やはり問題をこじらせていきます。さらに「隠し子」と名乗る青年まで登場して、一族の関係は崩壊寸前に。実は、この青年も、りんの母の容子も、過去の遺産相続問題で大きな傷を負っていたのですが・・。

相続放棄、限定承認、相続人の排除、特別受益、認知、不在者、代償分割」などの法律用語も飛び交いますが、ストーリーの邪魔をしない範囲でわかりやすく説明されています。もっとも、こんな法律用語を使う時点で「争い」ですね。作中に登場する『自分だけは絶対に損をしない遺産相続の知識』なんていう実用書など、実際にありそうです。

2015/12