浜松藩主の水野忠邦は、幕閣で出世するために自ら願い出て豊かな唐津藩から転封されていたのですが、家禄を減らされて不満を持つ家臣と、藩政の実権を実験を握ろうとする江戸家老が手を組んで、お家騒動の一歩手前状態。転封の際に諫死した家老の幽霊が出るとの噂も立っているほど。
さらに、水野忠邦が大奥女中と僧侶の不義密通に便宜を図ったのみならず、罪をライバルに着せようと陰謀を企んだとの嫌疑もかけられ、窮地に陥ります。
金四郎と耀蔵は忠邦を助ける計画を立てるのですが、その裏では騒動を煽ってもいるのですから、恩を高く売りつけようとの魂胆が見え透いています。果たして忠邦は、自分が助かる過程で金四郎と耀蔵を離反させようとして・・。持ちつ持たれつの関係を保ちつつ、互いに裏の裏をかこうとする駆け引きでは、相手の弱点を掴むことが必要。
狛犬のような外見をして人の神経を逆撫ですることに天賦の才を持ちながら、女性には純な幻想を抱き、友情も求めているという屈折キャラの耀蔵ですが、「冷静で英明で狡猾で傲慢な」忠邦のほうが一枚上手でしょうか。
しかも、今回の事件で金四郎は忠邦に意外な弱点を知られてしまいます。今回忠邦を助けたのは、その過程で金四郎が大事に想う女性が救われることを狙っていたからだと読まれてしまうんですね。
とっても楽しめる「大江戸ビカレスク・ロマン」です。たぶん今回限りの出番だと思いますが、講談師の小夜もいいキャラでしたし。水野忠邦の出世と没落までを描くロング・シリーズにして欲しいものです。
2011/11