りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

コレクションズ(ジョナサン・フランゼン)

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アメリカ中西部の郊外の街に暮らす老夫婦と、それぞれ都会で自分の暮らしをしている3人の子供たちの「関係修復(corrections)」過程を描いた長編小説、といっても、決して心温まる物語とはなっていません。エンディングなど、むしろゾーッとする気もするのですが・・。

地元の鉄道会社を退職している元技術者のアルフレッドは、パーキンソン病を患って痴呆症も出始めています。もともと頑固な夫の看病に手を焼いている老妻のイーニッドは、家族の絆を象徴するクリスマスに自慢の子供たちが全員集合してくれることだけを楽しみにしています。

でも「自慢の子供たち」もそれぞれ問題を抱えているのです。長男のゲイリーは、小さな銀行の部長で経済的には恵まれているのですが、姑を嫌う妻のキャサリンと両親との間に立って、精神的に疲れ果てています。目下の問題は、実家のクリスマスに妻と3人の息子を連れていけるかどうか。

次男のチップは女子学生と関係を持って大学教授の座を失い、作家を目指しているものの出版の見込みは全くなし。恋人にも去られて経済的に行き詰ったところに持ち込まれたリトアニアでの危ない仕事に飛びつくのですが・・。

末っ子の一人娘のデニースは美貌の新進シェフとして活躍しているのですが、離婚経験もあり、恋愛面では問題ばかり。ついにはレストラン・オーナーの妻と関係を持っていたことがばれて、解雇されてしまいます。

こんな5人がようやく一堂に会した実家での「最後の」クリスマス」は、家族の絆を修正する機会になるのでしょうか・・。

全米図書賞の受賞作とのことですが、いかにもアメリカ小説という感じです。何よりも登場人物たちがそれぞれ他人の眼を気にしすぎて、不安や悩みを増幅させているあたりが、他人との比較で自分の社会的な立ち位置の確認を絶えず気にしないではいられない社会を象徴しているように思えるのです。

そのあたりを事細かく延々と描写するものだから、息苦しくなってきます。その息苦しさこそが、現代社会そのものなのかもしれません。

2011/11