りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

すべては雪に消える(A・D・ミラー)

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原題の『Snowdrops』は美しい言葉に聞こえますが、モスクワで用いられる俗語には、「冬の間雪に埋もれていて雪解けによって現れる死体」との意味があるといいます。本書はこの言葉のように、後になって明らかになった忌まわしい出来事についてのサスペンス・ストーリー。主人公が婚約者に宛てた手紙という形式を取っています。

イギリス人弁護士の主人公ニコラスが絡む、3つの出来事が同時に進行。ひとつめは彼の本業であり、西側銀行団の代理人の一人として、ロシアにおける原油ターミナル建設プロジェクトに対する融資審査を行なうというもの。

ふたつめは彼の恋愛物語で、偶然であったマーシャとカーチャという姉妹に頼まれ、彼女達の叔母という女性のために、アパート交換の法的手続きを進めるもの。みっつめは同じアパートの老人からの、姿を消した友人を探して欲しいとの依頼。

そのどれもが「美しい物語」であるかのように進行していくのですが、その裏側に潜んでいたのは犯罪であり、悲劇的な結末を迎えるのはタイトル通り。特に、彼の恋愛が絡む物語は悲惨なものでした。モスクワの劣悪な住宅事情は殺伐とした事件を多く生んだようです。しかもニコラスは、マーシャのことを本当に愛していたのです。最後は騙されていることに半ば気づいていたのですが・・。

2011/10