りぼんの読書ノート

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眺めのいい部屋売ります(ジル・シメント)

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ニューヨークのイースト・ヴィレッジに建つ古いアパートの5階の部屋に45年間住み続けた老夫婦が、部屋を売って引っ越すことを決意。イーストリバーに架かる橋と、対岸のブルックリンを臨む眺望は捨てがたいものの、足腰が弱ってきた夫婦と、12歳になるダックスフントのドロシーにとって、エレベーターのないアパートでの階段の昇り降りが苦痛になってきたのです。

しかし、オープンルーム内覧会の当日になって問題が発生。ドロシーが急病に罹り、緊急手術に立ち会わないといけなくなってしまったのです。さらにミッドランド・トンネルにタンクローリーが立ち往生して大渋滞。しかも雲隠れした運転手がテロリストではないかという疑いも起こって、不動産価格にも影響が出るというのです。次々にかかってくる電話は、動物病院からなのか。不動産業者からなのか。テロ騒動を報じるニュースも含めて、一喜一憂する夫婦の長い週末は、どのような結果を迎えるのでしょう。

本書は映画化され、モーガン・フリーマンダイアン・キートンが夫婦役で出演したとのこと。リチャード・ロンクレイン監督は自身の作品について、「自分の人生の終わりが必ずしも下り坂でないと確信できるという事実を描いた物語だ」と語っています。原作と映画とでは結末が違っているようですが、そこはどちらでも良いのでしょう。長い週末の出来事をきっかけにして、2人と1匹は決意を新たにして、チャレンジ精神を取り戻すのですから。しかし古アパートに100万ドルもの値段がつくとは、ニューヨーク恐るべしです。

2017/9