りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

花桃実桃(中島京子)

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独身OLの花村茜の人生は、43歳になって一変してしまいます。会社のリストラにもあって、亡父・花村桃蔵の遺した、その名も古めかしいアパート「花桃館」の住み込み大家になるんですね。裏にお寺とお墓があるせいでしょうか。3階建て全9戸(空き室アリ)のアパートの住人は、変わった人ばかり。

・晩年の父の愛人だった李華さん(といっても、結構なお年です)。
・涙もろいウクレレ弾きのハルオ(家賃を請求するだけで泣かれちゃうんです)。
・「整形マニア」の年齢不詳女(顔の印象が残らないのは、整形のせいですね)。
・妹の霊が見えるという自称・探偵の男(しかも妹を愛しているというんです)。
・味のある老年夫婦(唯一、まともな住人に見えたのですが・・)。
・妻に逃げられたダメ父親の一家(中学生の息子が、父親と茜の見合いを画策?)
クロアチアからやって来た、百人一首を英訳する詩人。

住人たちに翻弄されて円形脱毛症にまでなりながら、アパート管理人の仕事を好きになってきた茜が、最後に悩むのが自分自身の結婚問題(これは切実!)。事情あって自分のことを「実の生らない桃」という茜の心情は、あたしにも他人事ではありませんし・・。

でも花桃だって、実桃だって、地下茎が重要な人だって、誰もがオンリーワン! 小さいおうち直木賞を受賞した著者による、軽やかな人生賛歌です。

2011/7