りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

キス(キャスリン・ハリソン)

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読むのが辛くなる本というものがあります。「新潮クレストブックス」の第2回配本作品となった本書も、そんな一冊。

若くして結婚し、娘が生まれてすぐに離婚した両親。母に引き取られた娘は、自立を求めて苦しむ母から十分な愛情を注がれないまま、深く傷つく思いを抱きつつ成長します。そして20歳になった娘の前に10年ぶりに現れた、まだ若くハンサムな父親は、娘の美しさに心を囚われ、彼女を強引に支配しようとするのです。2人が行き着いた先は、出口のない近親相姦でした・・。

著者の自伝的な回想録ですが、娘が父の歪んだ愛の呪縛から解放されるのは、母が乳癌で亡くなった瞬間・・ということが、娘が本当は何を求めていたのか、明瞭に伝わってきます。

本書を一人称の現在形で淡々と綴った著者は、この時点ではまだ両親の呪縛から完全に逃れてはいないように思えます。後に母との確執をテーマとした『The Mother Knot』との作品を著わしたとのこと。著者の魂が癒やされていることを望みます。

2011/7