りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

マリアビートル(伊坂幸太郎)

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悪党達が入り乱れて争うグラスホッパーの続編ですが、東北新幹線の走行中に完結する物語との意味ではラッシュライフとも共通点がありますね。

主要な登場人物は3組。狡猾に他者を支配する中学生・王子と、息子の命を人質にされて彼に囚われた木村。盛岡で待つ依頼主の元へ彼の息子とトランクを届ける腕利きの2人組・蜜柑と檸檬。そのトランクを奪う仕事の依頼を受けた殺し屋・七尾と、彼に携帯で指示する真莉亜。この3組が入り乱れ、走行中の新幹線という密室でトランクの争奪戦を行なうのです。

いずれも個性的なメンバーで、軽妙ながらすれ違う会話を楽しめます。窮地の際の切れ味が凄まじいものの徹底してツキのない殺し屋・七尾の悲観的な意見と、享楽的で楽観的な真莉亜の会話も、常にドストエフスキーを引用する小説好きの蜜柑と、常に機関車トーマスを引用する檸檬の会話もいいですね。

ただ、他人の心理を操って精神的に支配し罪悪感を持つことのない王子が、彼を息子の仇として狙いながら逆に囚われた元アル中の殺し屋・木村に服従を強いる会話だけは、あまりに嫌味でしたが・・。

そこに、『グラスホッパー』の生き残りであるスズメバチや、「押し屋」のアサガオらが絡むのですが、ラストに登場する意外な2人組が秀逸でした。過激な東北新幹線の旅、楽しめますよ。^^

2011/6