りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

クライム・マシン(ジャック・リッチー)

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短編のみを350編も書き続けた著者の作品が、17編収められています。2006年の「このミステリーがすごい!」海外編の第1位となった本。どの作品も、気の利いた着想が、スマートな切れ味で仕上げられていて、後味も悪くない、上質のショートショートになっています。いくつか例をあげましょう。この部分、ネタバレです。

「クライム・マシン」
タイムマシンを発明したという男が、殺し屋の前に現れ、過去に遡って殺し屋の全ての犯罪を目撃したと言います。本人しか知らないはずの証拠を次々と示され、ついに殺し屋はタイムマシンを買い取る気になるのですが・・。実は、タイムマシンの発明者と殺し屋の情婦がグルなんですね。ありふれたネタのようだけど、心理描写が臨場感たっぷりなんです。

「エミリーがいない」
妻エミリーは長期間不在で連絡も取れないと言う夫に対して、エミリーの姉は犯罪を疑います。姉に追い詰められた夫が、ついに夜中にスコップを持って庭を掘り返そうとしたときに、多数のライトが夫を照らし出し・・なのですが、実はこれはエミリー夫婦が共謀した罠。姉を名誉既存で訴えて、姉が相続した財産から慰謝料をせしめちゃおうという作戦なのでした。読者も、完全に騙されちゃいます。^^

「罪のない町」
この町には犯罪がないという、とりとめのない会話。学生も皆まじめで、生徒が一人半日欠席しただけ。でもその午後に、事故が起こって、その生徒が遺産を相続していたんですね。登場人物も気づかないうちに犯罪が示唆されているという、超絶テクニック。

ネタバレはこのくらいにしておきましょう。こんな感じのショートミステリーが17編、ぎっしり詰まってます。最後の数行で、「してやられた」感覚をたっぷり楽しめる1冊です。

2007/11