りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

雪の女王(ジョーン・D・ヴィンジ)

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アンデルセンの同名の小説をベースとした、SFファンタジーです。悪魔の作った鏡の破片が眼に入ったことから、雪の女王の虜となってしまった少年を探し求めて救い出す少女の冒険物語・・というのがオリジナル・ストーリー。少年の心を取り戻したのは、鏡の破片を溶かした少女の涙でした。

さて本書の舞台として設定されたのは、双子の太陽を持つ惑星ティアマット。「冬の星」がブラックホールに近づくたびに、「主導世界」との連絡が絶たれて主導世界のテクノロジーに依拠して惑星を支配する「冬の女王」の治世と、先端文明を失って原始的な世界となる「夏の女王」の治世が交替で繰り返される
不思議な世界。その周期は150年間。

150年に渡って永遠の若さを保ち冬の女王を務めたアリエンロードは、運命に逆らって自分のクローンを「夏」の少女として育て上げ、次代の夏の女王に就けようとします。自分自身の支配を継続させるもくろみでしたが、その少女ムーンが「巫女」となったことから思惑が狂い始めます。

ムーンの恋人の少年スパークスは冬の女王に連れ去られ、彼を求めてムーンの試練の旅が始まるのですが、その過程で惑星ティアマットを巡る問題の真相を知り、「巫女」であることの真の意味を知る・・というあたりが、SFっぽい展開。「巫女」は旧帝国の遺物などではなく、未来への期待が込められた存在だったんですね。

でもせっかくSF仕立てとした小説ですが、アンデルセンの物語のシンプルな強烈さには及んでいないように思います。オリジナルのストーリーを知らなければ、もっと楽しく読めたのかもしれませんが・・。

2011/6