りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2006/11 風が強く吹いている(三浦しをん)

11月は「陸上競技を題材にした小説」が印象に残りました。「走る」ことは「風」を意識することなんですね。

フランス王室の裁判をテーマにした2冊も良かったけれど、どちらも再読だった分、ランクを落としてみました。
1.風が強く吹いている (三浦しをん)
2人のワケアリランナーの出会いが、箱根駅伝への挑戦がはじまる。ほかの8人は全員ど素人。補欠もいなく、1人の脱落も許されない。「ありえな~い」と思えるスポーツコミックみたいな話だけど、「人生において強いランナー」をめざして走る彼らの物語が、走りきった彼方にある美しい世界を、読者にも見せてくれるのです。

2.一瞬の風になれ1~3 (佐藤多佳子)
ごく普通の高校からインターハイをめざす、スプリンターたち。先生・先輩・後輩・ライバルたちとの関係が、高校生の視点で自然に描かれるだけで、こんなにドラマチックな小説ができる! 何より、レースの前の緊張感や、高揚感が伝わってくるのです。

3.星々の生まれるところ (マイケル・カニンガム)
150年前、アメリカが世界で最も寛容な国になるとの夢を希望に満ちて歌い上げたホイットマンの詩を織り込んだ物語が、「そうはならなかったアメリカ」を思い起こさせてくれます。時代を超えた3つの物語が向かう先は、閉塞したアメリカから宇宙に新天地を求めて旅立つ「未来のメイフラワー号」!

4.王妃の離婚 (佐藤賢一)
フランス王の娘が、従兄弟のルイ12世から離婚を言い渡される。22年の間「結婚は成立していない」と言い切る権力者に対するは、孤独な王妃とかつて人生を台無しにされた弁護士の負け犬コンビ。法廷闘争を楽しむ本としても、当時の社会を描いた本としても、敗者の再生物語としても素晴らしい、佐藤さん初期の傑作です。

5.マダムの幻影 (藤本ひとみ)
王政時代には王妃らしくないと批判されたのに、革命時代には王妃であった罪を一身に背負わざるを得なかった不運な女性マリー・アントワネットの遺言が、彼女自身の虚像を剥ぎ取り、時代の嵐に翻弄された、彼女の娘の心をゆさぶります。藤本ひとみさんの渾身の一作です。




2006/12/4