りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2009/9 ミスター・ピップ(ロイド・ジョーンズ)

あらためて村上春樹さんの長編を、はじめから読み返しています。2度めでもおもしろいし、2度めでも難解。『1Q84』にあった言葉を思い出してしまいます。「説明しなければ理解できないのなら、説明しても理解できない」^^;

村上さんの小説は再読でも強烈なので、ほかの本が物足りなく思えてしまうのが難点。1位にあげた『ミスター・ピップ』は「読書の力」を伝える本として、アーザル・ナフィーシーさんの『テヘランでロリータを読む』と並んで記憶に残る作品になりそうではあるのですが・・。
1.ミスター・ピップ(ロイド・ジョーンズ)
世界から隔てられた内乱の島。政府軍と反乱軍の双方から交互に襲われる村で、学校を再開したのは、島にただひとり残った奇妙な白人の「ミスター・ワッツ」。少女はテキストになった『大いなる遺産』の主人公「ピップ」の物語に魅せられて、広い世界の存在を意識しはじめ、「想像力という魔法」を身につけはじめます。それは来るべき悲劇から再生する力を、彼女に与えてくれるものでもありました。

2.薄暮(篠田節子)
地方に埋もれた無名の画家を世に広めたいと画集の製作を企画した雑誌編集者が見出したのは、「美談」の陰に隠れていた画家の実態と、周囲の人々の欲望や疑心。さらには、一群の優れた絵画をなぜか「贋作」と決め付けている未亡人と画家との愛憎関係。亡夫を神聖視するしかない未亡人の心情が、恐ろしくて哀しいのです。

3.山田風太郎明治小説全集8 エドの舞踏会
いわゆる「鹿鳴館時代」を舞台として、明治の元勲たちの夫人たちをオムニバス形式で描いた作品です。狂言回しは、若き山本権兵衛とマドモアゼル捨松。明治の元勲の妻には、芸者や遊女出身の女性が多かったのですが、束縛も制約も多い中、上流階級の妻として力強く花を咲かせる女性たちの姿は、感動的です。



2009/9/30記