りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

地獄のコウモリ軍団(バリー・ハナ)

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クレストシリーズの中でも異彩を放つ異様なタイトルで、しかもこの表紙。前から気になっていましたが、手を出せずにいた本です。

「南部的ブラックジョーク」とでもいうのでしょうか。老い、死、犯罪、差別、ホモ、セックス・・ダークなワード満載。悲惨な人生を悼む通話(ロベルト・ボラーニョ)ほどは洗練されていないし、とてつもなく自虐的なジーザス・サン(デニス・ジョンソン)ともまた違う。他人の悲惨さや偏屈さや狂気を笑い飛ばすところに、何かが生まれてくるとでもいうのでしょうか。やはり「ブラックジョーク」としか言いようがありません。

老いの桟橋
死に向かいながらも善人になることを拒む老人達の、桟橋に集まっての世間話。「ひとりだけ聖人君子がいたが、ちょこっと前に死んでしもうた」。未亡人が衝撃の事実を述べます。「彼はホモだった。あたしは犬がほしい。」^^

ふたつのものがぼんやり、互いに襲いかかろうとしていた
バロウズがモデルと思われる不良文学じいさんが、ニューヨークをバイクで疾走。追っているのは「犬になってしまう病!」にかかって逃走中の90歳のドクター!

地獄のコウモリ軍団
戦闘で五体不満足になった兵士たちの軍隊が、最後の突撃を決行します。既に死んでいたはずの兵士たちが、天国への境界線を踏み越えて勝利してしまう?

ヤープの夜:ルーンズウェント・ドーヴァーによる報告書
田舎町でヤープに出会った頭の足りない男が語る、たどたどしい目撃談。ヤープとは一種の食人鬼のようですが、身体が透けて誰を食べたのか見えちゃうのはたまらないなぁ。^^;

至高のスキャンダル
片田舎に住む少年が「完璧な堕落とスキャンダル」を求めます。KKKの変態老人に囲われている女に惚れて忍び込むのですが、彼女は風呂場で全裸のまま自殺を試み、死にかけている最中でした。そんな女性と手錠で結ばれてしまうハメに陥ったら、スキャンダルの完璧度は高いですね。

モナは2階でアレを欲しがる
出産したばかりの40歳の妻のオナニーを見てしまった夫がとった行動は? そもそも妻と義妹と一緒に同居してるというのもちょっと・・。

ルーグ・ルートのスパイ
遠聴の少年が犯罪者であることを証明しようと望遠鏡で観察していた老人の望みは、少年を捕まえて罪を告白させることだったのですが・・。どっちが変態の犯罪者かわかったもんじゃありません。

よう、煙草と時間とニュースと俺のメンツはあるかい?
出来の悪い息子が逮捕された時に、今まで信頼していた妻までもがおかしなことを口走ったらショックだろうなぁ。でも父親だって、更正した息子が少年保護施設で働く様子を見て、息子を困らせている不良少年たちを次々とライフルで撃ち殺しちゃうんです。

これ以外にも、チェスをするとオカマ化する父親の話とか、エルビスの母の独白とか、年寄りが若いやつを喰らう話とか(これもモデルはエルビス?)、毒の強い物語が並んでいるのですが、この本は読まなくてもよかったなぁ。^^;

2009/10