りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

どんがらがん(アヴラム・ディヴィッドスン)

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奇想コレクションで最後まで未読だった一冊。SF、ミステリ、幻想小説など分野の異なる各賞を受賞した著者の作品らしく、多彩です。晩年は不遇だったようですが、元の奥様による「序文」が丁寧な弔辞となっています。

「ゴーレム」 静かな住宅街に住む年老いた老夫婦のもとに突然やってきたゴーレムは、怖ろしい言葉を吐き続けるのですが・・。老夫婦の鈍感さとの対象が笑えます。

「物は証言できない」 奴隷売買に手を出した嫌われ者の弁護士を襲った災難。法律を盾にして奴隷を物として扱う男に強烈なしっぺ返しが待っています。

「さあ、みんなで眠ろう」 惑星バーナムに住むヤフーと呼ばれる原始人類は、人類に狩られて実験材料にされる存在でした。この作品が書かれたのは、公民権運動が起こる前だったのですね、

「さもなくば海は牡蠣でいっぱいに」 捕食生物がいなければ大繁殖を起こしそうな生物がたくさんいますね。普段はどこにでもあるのに必要なときに限って見つからない安全ピンは、何かに捕食されているのでしょうか。でも変態の末に成長する個体もいるのです。

「ラホール駐屯地での出来事」 酒場で出会った妻の尻に敷かれている爺さんの昔語りは、ダメ男の復讐と犯罪の物語。そしてそのダメ男とは・・。

「クィーン・エステル、おうちはどこさ?」 カリブ出身の老女エステルの働き先はライディ家。旦那様はいい人だし坊ちゃんは可愛い。でも、お高くすました上にやたら威張り散らす奥様のことは好きになれません。そして奥様のたどった運命は・・。

「尾をつながれた王族」 お父様たちやお母様たちに水を運ぶ「一つ目」を邪険にするのは威張り腐った見張りでした、ある生物の生態なのか、異様な生きものの物語なのか判然としませんが、不気味です。

「眺めのいい静かな部屋」 ホームで晩年を暮らしている不満だらけの孤独な老人が、幸せそうな老夫婦に仕組んだ罠とは? 高齢者社会が進むと、こんな出来事も増えてきそうです。

「パシャルーニー大尉」 田舎の小学校にやってきた立派な紳士は、両親と別れて暮らしている恵まれない少年の父親なのでしょうか。二重に仕掛けれらたオチが秀逸です。

「ナイルの水源」 流行を後追いばかりしている売れない作家が酒場で出会った老人の秘密とは? 流行を先読みできたら成功間違いなしですが、そうと気づかずに無意識にできちゃう人って、世の中にはいるのでしょうか。

「どんがらがん」 大きな大砲を引っ張る奇妙な集団は、どこに行ってもやりたい放題。そこに現れた「国を救う呪法を求めてさすらう王子」を自称するマリアンは、救世主なのでしょうか。でも、彼のやることは強請りにタカリ。一番胡散臭いのです。

他には、監禁されたものの正体が意外なサシェヴラル」、いかにも南部風法螺話の「グーバーども」、謎の東洋人の店で手に入れた不思議なブツが少年の運命を変える「そして赤い薔薇一輪を忘れずに」など。

2013/11