りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

素数たちの孤独(パオロ・ジョルダーノ)

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イタリアの若い物理学者が著したストレーガ賞受賞作、かつこんなタイトルなので、かなり硬い内容の本を期待していたのですが、エゴイストの男女の悲恋物語でした。

これ、そのまま「いまどきのTVドラマ」になりそう・・と思ったところで、3ヶ月ごとに乱造されているTVドラマを楽しめない理由が理解できた気がしました。最近のドラマの登場人物って、エゴイストばかりだったんだ(少なくとも私がドラマを見なくなった頃は、そうだった気がします)・・。性格が外交的か内省的かにかかわらず、自意識が高くて自分の心の整理をつけることが一番重要と考えている若い男女たちの物語・・。

知恵遅れの妹をうとましく思ったことが悲劇に繋がってしまった過去を持つマッティアは、数学の天才でありながら家族や同級生と馴染めずに育ち、みずからを傷つけ続けます。スキーの事故で片足が不自由になったアリーチェは、スキーを無理強いした父親を許せず、醜い足へのコンプレックスから、拒食症になってしまいます。

「2人の出合いは必然だった」・・とありますが、2人を結びつけたのは互いの孤独です。子どものころの心の傷から立ち直れないまま、社会的な人間として成長することができず、手を差し伸べてくる相手のことも拒んでしまう2人ですから、互いに惹かれあいながらも簡単には結ばれてくれません。やはり、主人公の男女が結ばれるかどうかを最大の焦点としているようなドラマの原作に向いていそうなお話です。

2009/10