りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2006/4 マオ(ユン・チアン)

4月の読書は『マオ』が全て。「事実」の持つ圧倒的な迫力に、フィクションは勝てませんでした。最後に読んだ「チョコレートコスモス」は楽しめましたけどね。
1.マオ (ユン・チアン)
『ワイルド・スワン』の著者が10年を費やし『毛沢東神話』を暴きます。恐怖政治によって、数百万人を処刑し、数千万人を餓死させた男。若き日の毛沢東の写真が、軽佻浮薄で残忍酷薄に見えてくる。毛沢東批判が未だ許されていない中国のイメージも揺らぎます。

2.チョコレートコスモス (恩田陸)
演じる者だけが見ることのできる恐るべき世界。天才女優たちが演技の極限に挑みます。恩田版「ガラスの仮面」のようですが、文章の迫力は圧倒的。まるで舞台を見ているような気持ちにさせられました。

3.世界の果てのビートルズ (ミカエル・ニエミ)
北極圏にもほど近い、スウェーデンの北の果て。宗教も、迷信も、共産党も、村のしがらみもごっちゃにになった「男は腕力」のこんな地域にも、調子はずれのギターが響く。作者が自分の体験を描いた、楽しい成長ストーリーです。^^

4.人生のちょっとした煩い (グレイス・ペイリー)
普通の基準で見ればとてつもない不幸に見舞われているのに、「男ってしょうがないわね」と肩をすくめる女性たち。不幸を「ちょっとした煩い」と片付けて見せることこそ、幸せな生活をおくる秘訣なのでしょうか。作者と訳者の言いたいことは、こんなことじゃないとはわかっていますが・・。

5.シブミ (トレヴァニアン)
「シブミ」の精神を会得している孤高の暗殺者は、高潔な日本軍人に養われ、青年期には囲碁を学んでいました。20年前の本なのに、全く色褪せていないスパイ・ミステリー。世界情勢が変わっても読めるスパイ小説は少ないのです。



2006/5/11