りぼんの読書ノート

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三匹のおっさん(有川浩)

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先月読んだ蘇えるスナイパー(スティーヴン・ハンター)のレビューに、「シルバー・アクションともいえる分野が生まれているのでは?」と書きましたが、本書もそんな一冊です。「アクション」というには、かなりコミカルに描かれていますけど。^^


60歳の定年を迎えて近所のゲームセンターに再就職した剣道の達人キヨが、幼馴染みの悪友たちである柔道家で居酒屋「酔いどれ鯨」の元亭主シゲと、機械をいじらせたら無敵の頭脳派の工場経営者ノリとともに、自警団を作ります。本人たちによると「地域限定正義の味方」とのことですが、まぁ「夜回り団」ですね。年寄りの暇つぶし程度のつもりだったのですが、地域社会は彼らを必要としていました。

キヨの再就職先のゲーセンの店長をゆするワルたちに、そこでバイトをしているキヨの孫の祐希が腕を折られそうになったり、ノリの愛娘・早苗が地域に出没する痴漢に襲われそうになったり、シゲの妻・登美子がシルバー結婚詐欺に引っ掛かりそうになったり、問題は身内にも及んでくるのですから、「三匹のおっさん」たちも燃えてきます。

さらに、祐希と早苗の母校の中学で飼っているマガモのヒナに残酷ないたずらがされた事件、なぜか祐希にちょっかいをかけてくる早苗の同級生・潤を、AVの罠から救い出す事件、キヨの妻・芳江の友人を催眠商法から救い出す事件なども頻発。結局は「地域の交流と活性化がカギ」なのですが、この時代、やはりそれは難しい。

有川さんというと「ラブコメ」のイメージが強いのですが、その部分は高校1年生コンビの祐希と早苗がういういしく担当してます。少子高齢化に向かう社会の問題や、学校教育の問題や、おっさんたちの子どもの世代が父母となって起こす問題なども背景には見え隠れしますが、そこはシリアスにはならず、「痛快シルバー・アクション」を楽しむ本ですね。

2011/4