魅力的な授業をし、問題児も立ち直らせ、教師と生徒の間のトラブルも手際よく解決し、モンスター・ペアレントすら説得してしまう、とびきり有能な若い教師。理想的な存在ですよね。女生徒の人気を博するのは当然で「親衛隊」すら出来てしまう。
でも、その教師・蓮見の「裏の顔」が徐々に明らかになっていきます。実は蓮見は、生まれながらのサイコパスで殺人鬼だったのです。これまでにも数多くの殺人を犯しながらその全てが「完全犯罪」で、教師となったのも、クラスや学校を支配することで満足を得るためというのですから!
普通の高校の凡庸な教師や生徒の中に、怜悧な殺人鬼が紛れ込んだら何が起こるのか。はじめは自分にとって都合の悪い者を退学や停職に追い込むだけで済んでいたのですが、もちろん、やがて殺人が起こります。ひとつの殺人によって生じた綻びを繕うために、連鎖が起こり、最後には狂気の夜が・・。
後味の悪い本でした。それだけでなく、登場人物が多すぎることと、「対決」の構図がほとんどないことから、物語の展開にメリハリを感じにくかったかなぁ。狂気を燃え立たせるカラスの意味もわかりにくかったし・・。『新世界より』ほど異常な世界であれば、背景となっている世界についての推理も楽しめたのでしょうが。
2011/4