りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

蘇えるスナイパー(スティーヴン・ハンター)

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『極大射程』からはじまる、「ボブ・リー・スワガー」シリーズの6作め。日本刀(『四十七人目の男』)やインディ・カーレース(『黄昏の狙撃手』)の話の後なので、久々の本業回帰。やはり射撃手としてのボブ・リー・スワガーでなくては魅力ありませんね。

映画女優、大学教授夫妻、コメディアンと、かつてヴェトナム戦争に反対した著名人4人が狙撃されるという連続殺人事件が起こります。ヴェトナム戦争の英雄でかつての名狙撃手が、気を病んでの犯行と思われ、彼もまたライフル銃での自殺と推定される状況で死亡。しかし、整然としすぎる解決に疑問を感じたFBI特捜主任ニックは、ボブに調査を依頼。ボブが見つけ出したのは、容疑者の旧式のスコープではここまでの精密射撃は不可能ということでした。

超小型コンピュータ内蔵のハイテク・スコープ「iSniper」が浮上してくるのですが、そういえばかつての狙撃は、スナイパーとポインターとが一組になって行なわれていたことを思い出しました。ハイテク・スコープを使えば一人で狙撃できるのですね。

ボブの潜入捜査や危機一髪の脱出劇、ワシントンで「罠」にかけられてFBI内部で窮地に追い込まれたニックの二枚腰、若き女性捜査官チャンドラーの初々しい活躍もありますが、本書のハイライトは、真犯人を見つけ出してからのボブの活躍です。ハイテク機器で装備したスナイパー集団と、旧式の銃で対決するボブの孤高の戦いは圧巻。最後には西部劇時代の決闘シーンのような展開も!^^

ヴェトナム戦争の英雄ボブも、すでに還暦を過ぎています。老いてなおアクションに身を投じる主人公の活躍を描いた小説や映画が、最近目立ちますが、ベビーブーマー世代の読者も書き手も年をとっていく中で、「シルバー・アクション」とでも言えるようなジャンルが生まれているのでしょう。

しかし、スナイパーの活躍や、海兵隊の気質や、銃器に関する薀蓄が人気を博する社会というものはどうなのでしょう。主人公たちのセリフにも偏向したものを感じます。「小説」として読む分には楽しいのですが、銃を持つ人が皆、ボブのようにストイックで気高い者ばかりではありませんので・・。

2011/4