りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

醜聞の作法(佐藤亜紀)

イメージ 1

18世紀末、フランス革命前夜のパリにおけるゴシップ情報戦の物語。ちょっと前なら週刊誌や写真誌、今ならネットやツィッターに相当する、当時最先端の情報ツールは、印刷されたパンフレット。匿名情報のゴシップほど始末に終えないものはありません。噂を立てられた者が、噂を打ち消すのに右往左往するのは、今も昔も同じですね。いや、そもそも噂を立てたのは、噂を利用して何かをたくらむ本人なのかも・・。

さる侯爵が、美しい養女ジュリーを放蕩三昧の金持ちに輿入れさせようと企みますが、ジュリーには結婚を誓い合った若者がいました。彼女を我が子同然に可愛がっている侯爵夫人は、弁護士ルフォンに依頼して、侯爵と金持ちの企みを公表。

今なら「ブログ炎上」とでもいうところでしょうか。ゴシップはパリの世論を沸騰させ、侯爵と金持ちの正体探しが始まります。一方で侯爵は、印刷所経由でライターのルフォンをつきとめ、脅しにかかるのですが、「噂」は一人歩きをはじめていき、もはや侯爵夫人にも、侯爵にも、ルフォンにも止められないものに変貌していくのです。果たして最後に笑うのは・・?

フランス革命期に、新聞が世論形成に多いに貢献して、革命を推進していったり、新聞発行者自身が革命の大立者になっていったりした事実はよく知られていますが、そのルーツはこんなところにあったのですね。それにしても、この展開からハッピーエンドにもっていく手法は鮮やかなものです。^^

2011/2