りぼんの読書ノート

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サンタ・クルスの真珠(アルトゥーロ・ペレス・レベルテ)

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セビリアの教会が殺人を犯している」と、法王のパソコンに侵入したハッカーが残した怪文書の真相を探り出すために、ヴァチカン外務局が乗り出します。現地に赴いたのは、テンプル騎士団員のイメージを漂わせる、有能で精悍なクアルト神父。彼がセビリアで見出したのは、街の再開発のために売り飛ばされようとしている古い教会を守り抜く決意でいる老司祭と、教会のパトロンであった公爵家の末裔である美しい母娘。

しかも、その教会に祭られているマリア像の涙は、公爵家に伝えられえる100年以上前の悲恋が残した20粒の真珠・・とのいわく因縁つき。さらに、開発を進める銀行の副頭取は公爵夫人の婿というのですから、真実はなかなか見えてきません。

でも、本書はミステリではないのでしょう。調査を進めるクアルト神父は、いつしか公爵夫人マカレナに心惹かれ、偏屈な司祭に共感し、まるで「セビリアの街」の魅力に絡め取られたかのようになってしまうのですから。その意味では、本書の真の主人公は「セビリアの街」そのものと言ってもいいのかも・・。

それは、司祭に危害を加えようとする「3人組の悪党」のキャラにも現れています。忠実な元拳闘士の子分を従えて、うらぶれた元歌手のラ・ニーニャに店を持たせるために悪事に手を染める偽弁護士イブラヒームの「清い心」には涙を誘われます。彼らの中にも、昔ながらの「セビリアの街」が生きているんです。

ところで、第5巻で中断している『アラトリステ』シリーズはどうなったのでしょう?

2011/2