りぼんの読書ノート

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桜小町-ひやめし冬馬四季綴1(米村圭伍)

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「現代の講談家」を自認する米村さんの新シリーズは、「冷や飯食い」と呼ばれる武士の次男・三男たちを主人公にした得意のテーマなのですが、今までと何かが違っています。「語り」のような文体である、独特の「ですます調」が消えている!

22歳となった下士の次男・一色冬馬にとって、良い婿入り先を見つけることは死活問題。婿入りして一家を構えない限り、部屋住みのまま一生を終えることになりかねません。しかし、亡き父親が事件がらみで中士から下士に降格されたこともあって、縁談は進まず、メジロやウグイスなどを捕えて小遣いを稼ぐだけの日々を送っています。

そんな冬馬が、一世一代の一目惚れをしてしまいます。相手の女性はあろうことか次席家老の娘で、その家柄と美貌とで、藩内全ての男性から憧れられている高嶺の花。友人の十蔵の後押しもあって、「当ってくだけろ」とばかりに恋の大作戦に打って出るのですが、亡き父の身分降格にまつわる過去の事件も絡んでいる藩内の権力争いに巻き込まれてしまうのでした。

過去の事件の真相を知る過程で、師匠と崇めていた半之丞の過去や、友人の十蔵の真意に気付いてしまう冬馬にとっては、憧れの絹からも操られていたことなど、もはや些事にすぎません。でも、絹の妹の波乃に惚れられてしまったのは予想外。

「冷や飯食い」同士の冬馬と波乃は、身分は不釣合いでもいいコンビなのですが、今回の事件で、そう簡単には付き合えない秘密も抱えてしまいました。『四季綴』のタイトルですから、この2人を中心にしてシリーズが展開されるのでしょう。孤児の末松や、師匠の半之丞には、引き続き脇を固めて欲しいものです。

2011/1