りぼんの読書ノート

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2011/1 あんじゅう 三島屋変調百物語事続(宮部みゆき)

宮部みゆきさんの「三島屋変調百物語シリーズ」2作めの『あんじゅう』は、全ページに南伸坊さんのイラストがつくという豪華版。クライマックスへと向かう盛り上がりは前作の『おそろし』には及ばなかったと思いますが、ストーリーテラーぶりはさすがです。

フィリッパ・グレゴリーさんの『宮廷の愛人』に、もはや「ブーリン家の姉妹」との副題は適していませんね。テューダー朝にとどまらない、彼女の「英国歴史読み物」の全訳を期待。
1.あんじゅう 三島屋変調百物語事続(宮部みゆき)
心に深い傷を負い、叔父夫婦の営む店で行儀見習い中のおちかが聞き採る「不思議物語」。「奇数巻はホラー、偶数巻はユーモア」とする構想とのことで、この巻はユーモアがベースなのですが、人間の心に潜む闇の物語も結構怖かったですよ。タイトル作の「あんじゅう」こそ、ジブリを思わせる、ほのぼの感が漂ってましたけど。

 

2.密会(ウィリアム・トレヴァー)
76歳の時に執筆された短編集ですが、どの作品も「円熟」という言葉がぴったりで、登場人物の心の奥底で揺れ動く感情を鮮やかにすくい取った手際のよさを感じます。各作品の末尾近くにある、ほとんど警句のような纏めの文章が効いています。人間性というものを深く見つめた作家なのでしょうね。

 

3.エアーズ家の没落(サラ・ウォーターズ)
オープン・エンディングのままに終わる英国領主の没落物語は、読後にじっくり考えて著者のたくらみと巧みさに気づかされる作品でした。私の理解では、名作『半身』と同じ系譜の「サイコ・ミステリ」なのですが、当たっているでしょうか。原題の『The Little Stranger』は、そのままにしておかないといけなかったのでは?

 

 

 

2011/1/31記