幼い頃から保身を余儀なくされる不遇な少女時代をおくり、不実で好色な王女に育ったエリザベスは、異母姉メアリーの死によって女王の座に上りますが、前途は多難です。まだ「ゴールデン・エイジ」を迎える前のイングランドは弱小国。メアリー時代に夫のスペイン国王フェリペを支援して大陸への派兵を繰り返した結果は、カレーの喪失と国庫の破綻。スコットランドと縁戚となったフランスは侵略の意図を見せ、ローマ教皇からは暗殺指令を出されるという、八方ふさがり状態。
そんな中でエリザベスの孤独な心を掴んだのは、幼馴染みのロバート・ダドリーでした。忠実で有能な国務長官ウィリアム・セシルは、国家の安定を求めて国内外の権力者との結婚を進言しますが、エリザベスの恋心は燃え上がり、ロバートもまた国王への野心をあらわにします。しかし、彼には貞淑な妻エイミーがいたのです。
本書は「エイミー・ダドリーの殺害」というエリザベス朝初期のスキャンダルを、主としてロバートとエイミーのダドリー夫妻のそれぞれの立場から描いた作品です。女王の愛人となって権力と恋愛の二兎を追うロバートと、棄てられた妻という悪評にまみれながらも夫との復縁を願うエイミーは対照的ですが、果たして事件の真相は・・。
決して理想的な女王ではなかったエリザベスに「処女女王」の道を選択させた事件の意味は大きいですね。このことが、弱小国イングランドに「ゴールデン・エイジ」をもたらすことに繋がっていくのですから。でもまさかこんな真相だったとは・・。
2011/1