りぼんの読書ノート

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物語イギリスの歴史 下(君塚直隆)

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先史時代からテユーダー朝までの歴史を記した上巻に続く下巻では、17世紀から現代までが描かれます。外国からの干渉を排除するために生涯独身を通したエリザベス1世でテユーダー朝は絶え、スコットランド王ジェームズがステュアート朝を開きます。英国教会至上主義の国王から逃れたピューリタンアメリカに渡ったのが、この時代。しかし次のチャールズ2世が英国教会をスコットランドに導入しようとして反乱を招き、戦費調達のための大増税清教徒革命を招くことになります。 

 

内戦に勝利したオリバー・クロムウエルはチャールズ1世を処刑して共和制を開きますが、実態は彼の軍事独裁政権ですね。同時代のフランスではルイ14世が絶対王権を確立していたのとは対照的ですね。クロムウェルの死後にはチャールズ2世が王政復古を果たしますが、議会や国民は「人身保護法」や「審査法」で王を牽制。チャールズ2世の王弟でカトリック教徒であったジェームズ2世の王位継承をめぐって、保守党の前身であるトーリーと、自由党の前身であるホイッグが生まれます。結局ジェームズ2世は1688年の「名誉革命」で王位を追われ、娘婿のウイリアム3世が「権利の章典」に署名して即位。これが世界最初の憲法ですね。 

 

ここまでイングランドの歴史しか記していませんでしたが、アン女王治下の1707年にはグレートブリテン王国が誕生。女王の次に王位に迎えたハノーバー朝のジョージ1世は英国政治に関心が薄かったために、政治の実権は議員内閣が握ることになります。実質的な初代首相は1721年から21年間政権を担ったロバート・ウォルポール 

 

この頃からが近代史であり、あまりメモしておく必要はありません。大航海時代東インド会社によるアジア進出、欧州の王位継承戦争への干渉、フレンチ・インディアン戦争による北米での覇権掌握と、後のアメリカ独立戦争。対ナポレオン戦争ウィーン体制への参画。欧州大陸が革命に揺れた時代にナポレオンと対峙し勝利したことが、英国政治の保守姓を温存したようです。 

 

しかし産業革命の進展は資本家と労働者の対立を生み、チャーティズム運動は1838年に普通選挙を取り入れた「人民憲章」として結実します。選挙人は男性資産家のみでしたが、資産制約の段階的な緩和や女性参政権の獲得大が、二院制の確立と下院の優位化と並んで英国政治発展の焦点になっていきます。 

 

ヴィクトリア女王時代の黄金期、2度の世界大戦後の凋落と大英帝国の解体、サッチャリズムによる停滞期からの脱出を果たした英国は、今またブリグジット問題で揺れています。ローマ時代以前から欧州大陸との関係が最大の政治課題であった国の歴史的な宿命なのかもしれません。 

 

2019/12