りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ペンギン・ハイウェイ(森見登美彦)

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小学4年生のアオヤマ君たちの住む郊外の町に、突如不思議なペンギンたちが現れます。しかも、どうやらペンギンを作り出しているのは、歯科医院のお姉さんのようなのです。毎日の研究成果をノートにつけ、明日は今日より賢くなろうと決意しているアオヤマ君は、町を流れる小川の源流を探検する「プロジェクト・アマゾン」を中断して、ペンギンの謎に挑むのですが、同級生の少女ハマモトさんが森の空き地に浮かぶ水球「海」を発見するに至って大混乱。

しかし、全ては繋がっていたのでした。小川は「海」が浮かぶ広場から流れ出して同じ広場に戻っているし、ペンギンに至っては「海」を食べてしまう。アオヤマ君はお姉さんを研究することが全ての鍵と気付くのですが、肝心のお姉さんは何も気にせずに、コウモリや、クジラや、架空生物のジャバウォックを作り出したりしているのですから気楽なもの。ん~。いったいどんな謎なんでしょう。

これは「世界の果て」をテーマにした物語です。「世界の果て」は海の彼方や、宇宙の尽きる所だけにあるのではなく、たとえば少年のノートの中にもあるのです。そこは現在の少年の知識が尽きる所でもあるのですから。そして未知なるものに出会うたびに「世界の果て」は広がっていく・・。

従ってこの物語は同時に、少年の成長物語でもあるのです。少年は、お姉さんの「おっぱい」だけでなく、お姉さん自身を本当に好きだったことに気付きます。世界には解決しないほうがいい問題もあるのだよ、少年。^^

腐れ京大生や、京都の街の不思議を描いてきた森見さんの、新境地ですね。世界を知る喜びと痛みを経験する少年と、彼を見守って導く父親の関係も温かいですし。昨年結婚された森見さんは、父親となる準備をしているところなのでしょうか?

2011/1