りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

エルニーニョ(中島京子)

イメージ 1

同棲中のDV男から逃れて南の町にたどり着いた東京の女子大生・瑛(てる)は、「灰色の男」から逃げているという7歳の少年・ニノと出会います。さらに南へと逃避行を続ける2人ですが、いつまでも逃げ続けることはできません。いつかは戦わなくてはいけないのです。2人はそれぞれ、自分が逃げていたものと向き合うのですが・・。

逃避行の最中に挿入される、テルの夢想と思われる物語がいいですね。本筋との直接の関係はないのですが、物語に奥行きを与えていますので、そちらを紹介しておきましょう。

1.森のくまさんの話:くまさんは「何からお逃げなさい」と言っているのでしょう?

2.ヒマツリメと子守地蔵の話:子守地蔵によって救われた捨て子とヒマツリメの関係は?

3.白砂糖三百籠:オランダに帰るカピタンが日本の息子に遺したたったひとつの保証。

4.灰色の男たち:エンデの『モモ』に登場する時間泥棒たちにも言い分があるのです。彼らから奪い返した時間を、人間は何に使っているのでしょう?

5.蛸と美女とサンパン:大蛸にもコブラにも負けなかったカラユキさんが勝てなかったのは、島と島を隔てる果てしない海でした・・。

6.イソポのハブラス:イソップの知恵が授けた、ナカツェの里が栄える方法とは?

7.マゼラン/エンリケ/サント・ニーニョ:はじめて世界一周をしたのはマゼランではなく、マラヤ生まれの奴隷エンリケでした。マゼランがセブに置き去りにしたサント・ニーニョ像は、自力で信仰の対象へ復活を遂げ、後に幼きイエズス像として復帰を果たします。

8.鯨谷くんと北斗七星になった母親の話:3番目の母親サチコはミザールになりました。

9.エル・ニーニョ・南方振動:この小さな男の子がどうして発生するのか、世界はまだ解明に至っていないんですね。そういえば今冬の異常気象の原因はラニーニャだそうです。

10.ピーター・パンとウェンディ:ピーターは、ウェンディのお母さんのキスをやすやすと貰ってしまったそうです。

11.砂糖屋の看板娘:この物語は本筋の「エピローグ」になっています。テルとニノの「その後」はどうなったのでしょう?はっきりしているのは、自由を手に入れるには、自分自身が戦う必要があるということ。

2011/4