りぼんの読書ノート

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ビッグゲーム(ダン・スミス)

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サミュエル・L・ジャクソン主演のアクション映画のノヴェライズ版ですが、本書だけで成立するほど完成度が高い作品に仕上がっています。

舞台はフィンランドの未開の森。今まさに13歳の誕生日を迎えて、狩人の村における大人への通過儀礼である「狩の試練」へと赴こうとしている少年の心情描写から、物語が始まります。偉大な「熊殺し」の父親と比べるまでもなく、自分の腕が平均以下であることを知っている少年が、勇気を振り絞って森へと入っていく場面がいいですね。

しかし彼が遭遇したのは狩の獲物ではありませんでした。ミサイルランチャーを抱えたテロリスト集団。炎上して墜落する飛行機。内部からは開かないように操作された救命ポッド。そして少年が救出した男は、女性分がアメリカ合衆国の大統領であると名乗るのです。そして、落ちこぼれの狩人見習いにすぎない少年は、森の中では全く役に立たない大統領を助けて、テロリスト集団に立ち向かうのですが・・。

陰謀の詳細とか、黒幕の存在とかも説明されていくのですが、脱出劇のディテールの積み重ねだけで十分満足できる作品です。もちろん映画なので、少年が通過儀礼で得た獲物が「世界一の権力者の救出」であったという、ハッピーエンドはお約束ですね。本書は、自分の内部に秘めていた芯の強さに気づいていく、少年の成長物語なのです。映画はもっとアクション寄りなのでしょうが。

2019/5