りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

左京区恋月橋渡ル(瀧羽麻子)

イメージ 1

京都の古い学生寮で、趣味と研究を偏愛する仲間たちに囲まれて4年間をすごした理系大学院生の、みずみずしい初恋物語です。

花火好きが高じてエネルギーの研究をしている山根が、糺の森で出会ったのは、突然の雷雨に浮かび上がる満開の山桜の向こうに佇む、白いワンピース姿の女性でした。彼の心もまた雷に撃たれたように、しびれてしまいます。もちろんこれは恋ですね。しかしその女性は、正真正銘の「姫」だったのです。

京都の夏を彩る葵祭の主役が「斎王代」であることは、関西に暮らすようになって初めて知りました。普通のミスコンとは異なり、自前の衣装だけで数百万円もかかるという斎王代を務めるには、京都の由緒ある家の娘であることが条件なのです。

その女性、美月さんの素性を知った山根に、どのような感情が生まれるのか。そして彼の初恋はどのような結末となっていくのか。そろいもそろって奥手なくせにおせっかいな仲間たちとの関係はコミカルい描かれますが、いかにも京都を舞台にした作品らしく、しっとりとした情感に満ちています。

2019/5