りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

プロトコル(平山瑞穂)

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プロトコル」とは、コンピュータ通信における約束事をさす情報処理用語ですが、もともとは人間どうしが交流する際の規則や手順などを指す言葉だったそうです。

大手ネット通販会社に勤務する有村ちさとは「膨大な文字列をひとめで記憶でき、そこから意味のある情報を抽出できる」という類稀な能力を持っているのですが、人間を相手にした意思疎通、とりわけ恋愛関係のプロトコルがずれている女性。ちさとの能力は幼い頃から彼女に英語を教えた父親によって目覚めたのですが、その父親は精神を病んだまま海外を放浪中。彼女が人間関係を苦手とするもうひとつの特性も、やはり父親が原因なのでしょう。

本書は、ちさとが会社を解雇された次長から逆恨みされる物語。ちさとが上司から依頼されたネットへのアクセスログ調査によって、勤務時間中のアダルトサイト閲覧が発覚して解雇された次長が、ちさとに個人情報漏洩事件を起こさせようと画策するのですが・・。

とはいえ、この事件がちさとを成長させ、運命的な出会いにまで繋がるのですから、わからないものです。欠陥を克服して「普通の人間」になった者からは、得てして「特異な能力」は失われてしまうものなのですが、彼女の場合は大丈夫かも。最後に出合った相手は、似たもの同士だったのですから・・。

テンポのいい、楽しめる小説でした。姉妹編の『有村ちさとによると世界は』も読んでみましょう。

2011/1