りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

恋肌(桜木紫乃)

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ラブレスワン・モアでブレークした桜木さんの初期短編集です。北海道を舞台にダメンズたちと出会いながらも逞しく生きる女性たちの物語群には著者の原点を見る思いがしますが、当時はまだ「新官能派作家」などと呼ばれていたんですね。

「恋肌」 嫁不足の酪農家が貰った中国人嫁というテーマは『氷平線』にも登場しました。子供ができないため舅と姑に面と向かって悪口ばかり言われている嫁は、本当に日本語がわからないのでしょうか。彼女に対して愛情を感じている夫は妻との心の触れ合いを求めるのですが・・。

「海へ」 生きる意欲もないまま娼婦にまで転落した女性に、常連客から事実上の身請けの話が持ち込まれるのですが、彼女には新聞社をリストラされたヒモ状態の男がいたのです。富豪と思っていた常連客の正体を知ったとき、彼女はある決意をするのですが・・。

「プリズム」 運送屋の事務をする女性には同じ会社のドライバーの恋人がいたのですが、事故で解雇されてダメンズに転落。バイトで入ってきた大学生の男の子に誘われて関係を持った晩、元ドライバーに見つかってしまうのですが・・。

「フィナーレ」 テレビ局の地方スタッフとして採用された男は意外な場所で、ススキノの風俗記者時代に知り合ったストリッパーと偶然の再会を果たします。互いに第二の人生を生きる男女は声もかけずに別れるのですが・・。

「絹日和」 着付け師範の助手として働いていた女性は、夫の仕事の関係で移った札幌では仕事の口はなく、やがて夫も職を失ってしまいます。久々の師範からの連絡は息子の結婚式での着付けの依頼でしたが、彼女は師範の息子と関係を持ったことがあったのです。彼女の決断は・・。

「根無草」 新聞記者として文化欄を担当するようになった女性に連絡をしてきたのは、幼いころ一家で夜逃げしてきた父親に怪しい儲け話を持ち込んできた男でした。彼女は男に「両親とも亡くなった」と嘘をつくのですが・・。


2012/11