りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

願い星、叶い星(アルフレッド・ベスター)

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SFの古典である『虎よ、虎よ』(未読ですが)の作者の中短編を集めた一冊です。「時間と空間を手玉に取り、機知に富み、深遠であると同時に軽薄」とも評される「ワイドスクリーン・バロック」の片鱗が、その作品からもうかがい知れますね。

ごきげん目盛り:狂ったロボットを扱った作品。ロボットから人間へ、そしてまた人間からロボットへと狂気が伝染していく「共感覚」の発想が楽しめます。

ジェットコースター:犯罪と暴力と強姦の発生率が急上昇しているのは、「未開」の過去に戻ってスリルを味わおうとする、未来のタイムトラベラーのせい?

願い星、叶い星:分解ビーム、物質変換機、ロボット、テレポート・・。突如現れた「恐るべきこどもたち」。鍵を握るブキャナン少年の才能は願い事を叶えること。延々と無限にのびる道路を孤独に歩き続けるイメージは怖いですね。

イヴのいないアダム:地球全体を包み込む分裂反応の引き金をひいてしまった男は、未来の生命の誕生を信じて海に返ってゆきます。生命の偉大な母たる海さえあれば、アダムもイブもいらないのです。シリアスな作品でした。

選り好みなし:原爆で荒廃したアメリカ中部で人口が増えているのは、その時代こそふさわしいと思うタイムトラベラーのせい? でも、自分の時代から逃げ出した者は、新たな時代での狂人となるしかありません。

昔を今になすよしもがな:地球最後の人間が、頭のいかれた男女だったら? でも、お嬢様趣味の女とTV狂の男にも危機が迫っているようで・・。

時と三番街と:誤って過去に送られた「未来の世界年鑑」を取り戻す物語。映画「バック・ツー・ザ・ヒューチャー2」でビフが手に入れたのはこれかしら?

地獄は永遠に:自分の思い通りの世界を創造する権利を与えられた6人の男女が作り上げたのは、それぞれの無間地獄にすぎませんでした・・。オチは、フィリップ・K・ディックの『ユービック』と共通する部分もあるようですが、やはり独特の世界です。

2010/12