りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

心臓異色(中島たい子)

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漢方小説そろそろくるで、30代女性の微妙な体調の悩みを描いてきた著者ですが、LOVE&SYSTEMSと本書は、かなりSFがかった作品です。新境地の開拓なのでしょうが、あまり成功しているとは思えません。次作の院内カフェでは、元の路線に戻っているようです。

「家を盗んだ男」
凄腕の泥棒だった男が、人を愛して守るべきものを持った途端に、自分が他人の大切なものを奪ってきたことの罪深さに気付きます。彼は彼女と暮らすために、中古の家を買ったのですが・・。

「ディーラ・イン・ザ・トワイライト」
中古車販売店にやってきた男女が、気に入った車があったのに突然消えてしまいます。書類に残された連絡先の男性は、その車の前の持ち主だったのですが・・。事故死した幽霊なんていうオチではないので、ご安心を。

「それが進化」
近未来の物語。二足歩行しかできない旧世代の中古ロボットに愛着を感じ、「アダムとイブ」と名付けたペアを保有していたところ、今まで機能していなかったアップデート・ランプが突如点灯。数万体もの同タイプのロボットの同時アップデートは、進化なのでしょうか。

「心臓異色」
中古心臓の移植手術を受けた男性が、急に肉好きになって行動的になり、英雄的な行為すらするようになってしまいました。それはやはり、前の持ち主から影響を受けてしまったのでしょうか。「前の持ち主」がオチなのですが。

「躍るスタジアム」
国際球技会が、バブルが崩壊した国で開催されることになったものの、スタジアムを新設する予算がありません。中古スタジアムをプロジェクションマッピングで飾り立てる計画は成功しそうだったのですが、延長戦の末に夜明けが迫っていました。

「ボクはニセモノ」
千年以上前の遺跡から発掘された中古レコードが復刻されました。ジャケット写真の女性に恋してしまった男性は、残されていた髪の毛からクローンを作るのですが、レコードの持ち主が歌手本人ということでもないですよね。しかしその男性にも出征の秘密があったのです。

「いらない人間」
遠くない将来 活力を失って絶滅に向かっている人類を救うため、過去から「いらない人間」を連れてくることになったのですが・・。その時代から消えても、歴史に影響を与えない人間とは、誰だったのでしょう。

2017/8