りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

巷説百物語(京極夏彦)

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シリーズ5作めの『西巷説百物語を読んで、全盛期の又市の活躍を描いた、はじめの2作品を読み返してみたくなりました。

「小豆洗い」かつて姉弟を手にかけた僧侶が川で足を滑らせて死んだのは、小豆洗いのせいなのです。最初の一話ですから、どんな展開の話になるのか全く知らずに、ドキドキしながら読み始めたなぁ。

「柳女」品川宿の旅籠の主人が不慮の死をとげたのは、柳を祀った祠を壊したたたりなんです。おぎんの過去がちょっとだけ明らかになります。

「白蔵主」猟師が寺の和尚を殺害したのは、猟師に狩られた狐の怨念のせいに違いありません。和尚に成りすましていたのは猟師を操っていた大悪党ですが、恋人まで殺してしまった漁師の業の深さは、やはり狐のたたりなのかも・・。

「舞首」人斬り侍と田舎侠客と野人の悪党は、首になっても三すくみになって渦巻く淵で争いを続けているんです。でも、本当に殺されたのは野人を隠れ蓑に悪事を繰り返していた代官所の役人なんですけどね。

「塩の長司」加賀の馬飼い大尽は、馬に身体の中に入り込まれて悶死します。馬を飲み込むように見せる徳次郎の幻戯って、どんなにすごいんでしょう。

「芝右衛門狸」落胤の武士に化けていた狸は、犬にかみ殺されてしまいます。大名まで巻き込むなんとも大掛かりな仕掛けでした。好人物を演じたら抜群で、動物の使いにも長けた事触れの治平は、なかなかいいキャラです。

「帷子辻」妻の死体を盗まれて遺棄された京都町奉行与力は、犯人とおぼしき人物と相撃ちとなります。この与力、死体となっても妻を愛するほどでしたが、生と死の一線を越えてはいけません。お竜が腐乱死体を演じるというのも壮絶。

再読しての感想は・・やはり上手い! 面白い! 人の掟で裁けない事件を、妖の名を用いて裁きをつける手法は斬新でした。

2010/11再読