りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

だから、ひとりだけって言ったのに(クレール・カスティヨン)

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「母と娘のあいだには、甘くも美しくもない秘密がある」

19編の短編には、さまざまな年代の母と娘が登場します。母が娘を語る物語も、娘が母を語る物語もあります。でもどの作品にも共通しているのは、互いに苦しみ傷つけあいながらも絶対に切ることの出来ない絆に結ばれてしまっている母と娘の姿です。

ひとりだけって約束だったのに、双子の娘を産んでしまった母。離婚した後で異常になっていく母の姿を見届ける娘。娘のブラジャーを気にする夫のしぐさに、娘との関係を疑う母。夫の浮気相手が自分の母親だと気付いてしまった娘。

じゃけんにされているのに、娘と親友きどりでいる母。どこまでも追ってくる母からの手紙をうとましく思う娘。激しい暴力をふるう娘に傷つけられて悩む母。癌に侵された母にイライラさせられる娘。

娘をいつまでも自分の思い通りにしようとする母。母と異なる自分のアイデンティティを主張しようと苦しむ娘。娘を薬漬けにしてしまった母。母の介護に疲れ果ててしまった娘・・・

フランス人の若い女性作家による作品ですが、日欧の差は感じません。ここまでエキセントリックな姿では現れていなくても、母と子の問題は自分の中にも存在しているのです。だからこそ読みにくかったのですが・・。数編あった心に染み入る物語には、ホッとした気分にさせられました。

2010/11