りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

食堂かたつむり(小川糸)

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綺麗すぎて生活を感じない不倫小説喋々喃々は好みではありませんでしたが、こちらは、むしろファンタジー的な物語としてすっきり読めました。

母に反発して上京し、恋人とともに料理店を開くためにトルコ料理店でのバイトに励んでいたリンゴこと倫子は、同棲中だったインド人の恋人が全てを持ち去って消え失せていたのにショックを受けて、声を失います。唯一残った亡き祖母から譲り受けたぬか床を持って帰郷し、憎んでいる母に頼みこんで小さな小さな食堂をはじめたリンゴ。

1日1組のお客様だけをもてなすメニューのない食堂は、開店早々にちょっとした奇跡が続いたことによって、恋や願い事を叶える食堂として話題になっていきますが、リンゴの声と心が回復するには、母親との和解が必要だったのでした・・。

ペットの豚を屠殺して調理する場面や、死んだ鳩の料理を嫌う方も多いようですが、それほど気にするようなことでもないでしょう。料理をテーマとした再生物語の重要なきっかけとして、作者が「必然」と考えたことなのですから。ここまでファンタジー的な展開だとむしろ、著者の経済感覚のなさは気になりません。実際には、1日1組のお客様では採算取れないとは思うのですが・・。

2010/10