りぼんの読書ノート

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緑金書房午睡譚(篠田真由美)

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「月の島」にある古書店「緑金書房」へようこそ。でもそれは、もしあなたがたどり着けたら・・のこと。そこは「こちら」と「あちら」の境界にある場所なのですから。

高校休学中の比奈子は、大学教授の父親が研究休暇でイギリスに行くことになって、亡き母の親戚の「緑金書房」に預けられますが、そこにはどこか捉えどころのない店主の緑朗に加えて、謎の美少女や人語を解する黒猫もいる模様。そして、比奈子の周辺で不思議なことが起こり始めます。

明らかに『ナルニア』をモチーフとしていますが、『アリス』や『真夏の世の夢』や「マザーグース」など、イギリス系の「感覚系ファンタジー」のオン・パレード。「あちら」の世界はまだ全貌を見せてはくれませんが、それは比奈子の成長とともに現れてくるものなのでしょう。比奈子が高校を休学している理由だって、まだ漠然としてますしね。

でも、既存のファンタジーに対してオリジナリティーを持たせた「あちら」の世界を描くのは難しそうですので、続編でどう扱われるのか、気になります。続編・・あるんですよね。

舞台が古書店なのは、とってもナイス。「本は精巧な記録装置で、タイムマシンで、異世界へ通じる扉」なのですから。ゆきあやさんも指摘していましたが、黒猫ことジャン・クロードの江戸っ子口調はちょっと違和感ありますね。でも場所が「もんじゃ」で有名な月島なのですから、長年住んでいるうちに同化してしまったものと理解しておきましょう(笑)。

2010/10